180種類を超える世界中のブルーベリーを栽培

野呂山は、瀬戸内海国立公園の中で神戸の六甲山に次ぐ標高だ。頂上は一年を通して冷涼で、寒い地域を好むブルーベリーの栽培に適している。ブルーベリー農家では通常、5種類から多くても10種類程度のブルーベリーを収穫している。しかし、ここで栽培するブルーベリーの品種は、実に180種類を超える。中には非常に珍しい品種や、５００円玉の大きさほどに成長するブルーベリーも栽培している。

「180種類ものブルーベリーを食べることができるのは、うちだけじゃないですか？」

と笑顔で話すのは、野呂山ブルーベリー　代表・中別府幸二さんだ。

 

野呂高原ブルーベリーを開くまで

中別府さんとブルーベリーの最初の出会いは、お知合いの方からいただいた乾燥ブルーベリーであった。ブルーベリーには目に良いとされている「アントシアニン」が豊富に含まれている。当時、パソコンの画面と長時間向き合う中別府さんにとっては、ブルーベリーの効能に大変興味を持たれ、「せっかくならブルーベリーを自分の手で育てて食べてみたい」と考えたそうだ。そこで、3品種の苗を購入し、自宅で育てた。みるみる育つブルーベリーに喜びを覚えたのが、栽培のきっかけである。

また、野呂山との出会いは、中別府さんが、海上自衛官として呉基地に赴任した時である。年間を通して気温が7.3度以下となり、ブルーベリー栽培に適していることを知り、「定年退職後はいつかこの場所でブルーベリーを栽培したい」と夢を膨らませていった。

 

試行錯誤の連続

中別府さんは、海上自衛官退職後、早速、野呂山・山頂付近に約600坪の有休農地を借りた。しかし、その農地は長い間活用していなかったことから、木々が生い茂り、さらには土壌も粘土質であり、水はけも悪く、すぐにブルーベリーを育てられる環境ではなかった。

近隣住民の方にも協力をいただき、チェーンソーで木々の伐採、さらに伐根まで全て自分の手で行った。木々の伐採が終わると次は土地改良だ。ブルーベリーは酸性土壌を好む。そこで、土を掘り起こし、粘土質の土は全て除去。ピートモス（農業、園芸用で使用する酸性土）に入れ替えて有機土壌のブルーベリーが育ちやすい環境に作り替えた。

ブルーベリーを育てられる環境が整ってからも、ブルーベリーが大きく育つようになるために、2年程度かかる。遊休農地を開墾してから最初のブルーベリーを収穫するまで実に3年の月日を要した。

中別府さんには農園準備までの月日を振り返っていただいた。

「ここに至るまでは試行錯誤の連続でしたね。でも、ブルーベリーにはたくさんの種類があり、ひとつでも多く自分の手で育ててみたいと思ったんです。苦労よりも期待の方がはるかに大きく、楽しんで取り組めましたね。」

さらには、

「現在では180種類程度のブルーベリーを育てていますが、ブルーベリーでも、品種によって味や香りが異なります。ひとりでも多くの方にこのことをお伝えしたいですね。」

 

中別府さんのこだわり

180種類ものブルーベリーの品種を栽培している他に完全無農薬の有機栽培にもこだわる。

「化学肥料や農薬を全く使用しない栽培に徹しており、どなたでも安心して食べていただけるものを提供しています」と中別府さん。アローカナや烏骨鶏、エミューなど数種類の鳥も飼育しており、その鶏糞も肥料として使用しているそうだ。

そのようにこだわって栽培したブルーベリーは、ジャムとしても販売している。ブルーベリージャムは、中別府さんご自身が製造して、ＪＡ呉ふれあい市で販売するなど人気商品だ。

　

 

ブルーベリー摘み取り体験とＢＢＱが楽しめる

ブルーベリー摘み取り体験は、7月中旬から10月初旬迄行うことができ、体験時間は1日4時間あるので、ゆっくり様々な品種の味比べをしながら、収穫体験ができる。

中別府さんは「お越しになられる方には、是非たくさんの種類を食べていただき、大きさや味・香りの違いを楽しんでいただけたらと思います。様々な品種のブルーベリーを楽しめるのはここだけ！！」と話す。

予約制であり、事前にお電話を。

また、約600坪の畑には、様々な野菜も栽培している。完全無農薬野菜と野呂山で捕獲したいのしし等のジビエを使用したバーベキューも絶品だ（要予約）。

訪れる時は、熱中症対策と虫よけ対策が必要。コロナ対策については、入退場時に手指のアルコール消毒を行っている。ぜひご家族・ご友人とで訪れていただきたい。