海風を感じながら「安浦かき」のおいしい理由を満喫。|山根水産
山根水産
広島県呉市安浦町三津口2丁目2329-94
牡蠣(かき)のむき身生産量日本一の広島県。県下のあちこちに産地がありますが、安浦町には県下で唯一、「くい打ち式養殖」に取り組む生産者がいます。手がかかるにもかかわらず、くい打ち式を続けるのは「かきがおいしくなるから」。くい打ち式養殖に取り組み、水揚げ見学やかき打ち体験を行う山根水産で、安浦のかきがおいしい理由を体験してきました。
県下で4軒のみ、くい打ち式の生産者のもとへ
安浦町の三津口湾海域には、標高839mの野呂山の肥沃な土に含まれるミネラル分が流れ込む。島々に囲まれて津波などの影響を受けにくく、かき養殖に最適の地だ。昭和20年代には40軒ほどあったかき養殖事業者は、現在は10軒。そのうち4軒でくい打ち式を続けている。山根水産の3代目、山根周志さんに、くい打ち式養殖の工程を教えてもらった。
ただ、おいしさのために2年がかり
くい打ち式養殖は2年がかりだ。約10か月をかけてかきの種を安浦にある抑制棚で育て、安浦の沖にある筏にかきを移し、通し替えを行う。ここで13~15か月かけて育てる。次に、沖から岸に近いくい打ちの棚へ移動させる。くい打ちの棚での約2か月が、かきのうまみに大きく左右するそうだ。
沖にある筏に案内していただいた。抑制棚から運んだかきの種を厳選し、新しい針金に通し替えてこの筏に吊るしておくそうだ。筏はかきの成長度合いにあわせて、何度も場所を移させる。このような状況で1年以上、その間、かきや筏につくフジツボを手作業でとるなどの作業、お世話も欠かせない。寒い季節の海は冷たくとてもつらい。「海に落ちたこともありますよ」とおおらかに笑う。
船に取り付けられているクレーンがうなりをあげると、海から牡蠣の束が引き上げられた。長さ3mの針金にびっしりとかきがついている。青空からかきが降ってきているかのような、圧巻の景色だ。
仕上げのくい打ちの棚も見せていただいた。棚は潮が満ちると海に沈み、潮が引くと現れる。
時代遅れのてまひま、それでも続ける理由
収穫までに2年以上の月日がかかり、竹の杭は日々の修理が欠かせず3年ですべて取り換えなければならない。手間も費用もかかり、収穫量は少ない。「確かに時代遅れのやり方よね」と山根さんもぼやく。ただ「祖父の代から続いていることだから、自分の代でやめるわけにはいかない。何より、おいしいかきができるんよ。手をかけるほどおいしい、人と一緒で面倒みるとよく育つ。お客さんのところへ少しでもおいしいものを届けたい。だから、やめることはできんよね」と思いがあふれる。
くい打ち式に限らず、自然相手のかき養殖。台風には打つ手はなく、危険が去るのを待つしかない。海の筏の浮きが山の頂上まで飛び上がったこともあるそうだ。「自然への不安は考えるときりがない。それはふっきるしかない。いかに自分なりに最善を尽くすか、問題を乗り越えるかを考えて試すだけ。すぐに結果が分かるので楽しいね。この仕事が好きだからやめられんよね」と明るい。
かき打ち体験で、1粒5秒のプロの技に挑戦
「安浦のかきのことを多くの人に知ってほしい」と、山根さんはこれまで地元小学校の社会見学を受け入れてきた。このたびグリーンピアせとうちと協力して、水揚げ見学とかき打ち体験のメニューを用意した。そのために、かき打ち体験をする桟橋をなんと手づくりで準備した。
かき打ち体験では、まず山根さんがお手本を見せてくれた。持ち手に小さなかまのような刃が付いた「かきうち」と呼ばれる道具を、かきの上皿と下皿の境目に打ち込む。安浦かきは2年もので殻が固いので、ナイフでは強さが足りない。刃が入ったら貝柱を切って、てこの原理でふたをこじ開ける。パカッと大きな身が現れた。
簡単そうに見えたのに、いざやってみるとなかなか開かない。刃が指に当たらないように注意しながら、ここだと狙いを定めて力を込めて打ち込んだ。最初に打ち込む位置と、思い切りのよさが上手に開けるポイントだそうだ。打ち子さん(殻付き牡蠣をむき身にする専門の方)は、かき1粒あたり5秒で開けるとのこと。プロの技に挑戦してみよう。
変わりながら、変わらぬおいしさを守る
安浦町では毎年2月に、安浦かき祭りを開催している。「安浦のかきを知ってもらって、安浦かきがほしいという人を増やしたい」という山根さんの思いから始まった。「むき身を買いに来る人は高齢者が多いし、若い人はかきを食べなくなっている。このままではかきの需要が減る。わたしたち生産者側が変わらないと、安浦かきを残せない」と力を込める。
「生がきがおいしいことは、消費者の皆さんもよく分かってくださっている。ただ生がきは料理をするのに手間がかかる。冷凍のものが手間いらずだし、冷凍技術も進歩しておいしい。生産者が時代の変化を受け入れて、求められていることに向かって変わっていかないと生き残れない」。
山根さんは、生がきに料理のレシピを添えて食べ方を提案したり、電子マネーの支払いを取り入れるなど買い物のしやすさを高めた。今後は加工品の開発にも挑戦し、年間を通じて求められる食材にしていきたいと話す。そしてネット販売も始めたいと新たな取り組みに積極的だ。
昔ながらの方法を守り、変わらぬおいしさを提供する安浦かき。安浦かきの生産の現場を見学して、新たなかきの魅力を体験してみてほしい。三津口湾の穏やかな海風と美しい景色もぜひ。
かきの水揚げ見学とかき打ち体験
12、1、7月以外、要予約
所要時間は1時間半
1回20人以上40人まで
予約・問い合わせは、グリーンピアせとうちへ。
TEL 0823-84-0262
名称 | 山根水産 |
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お問合せ | 0823-84-6331 |
営業時間 | 8:30~17:00 |
定休日 | かきの水揚げ見学とかき打ち体験は要相談。 店舗は日曜日・祭日。 |
駐車場 | 店舗駐車場有り(3台) |
ウェブサイト | |
所在地 | 広島県呉市安浦町三津口2丁目2329-94 |
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