世界を旅した2人の古民家ブルワリー。心のつながりから生まれるクラフトビール。|ストーリーエージェント「アイビーブルーイング」
株式会社 Story Agent(IB BREWING)
広島県呉市安浦町大字中畑1238
呉市安浦町市原集落にある築約70年の古民家。縁側から中をのぞくと、銀色のタンクがずらりと並んでいます。あたりに漂う香りは…なんとビール! 2018年の西日本豪雨で被災した古民家を世界を旅した2人がビール醸造所に生まれ変わらせ、2022年2月にクラフトビール「IB BREWING」が誕生しました。人と人、心と心のつながりから生まれたビールを求めて、古民家ブルワリーを訪ねました。
「ビールを売りたい」「ビールをつくりたい」二人の出会い
コンビニエンスストアのドリンクコーナーの一角でひまわりの絵のラベルを見て、手に取ったことがある人も多いのではないだろうか。それこそ、呉市生まれのクラフトビール「IB BREWING(アイビーブルーイング)」。ローストしたひまわりの種を使ったビールで、ほんのり香ばしい味わいが人気だ。
このビールづくりに取り組むのが、㈱ストーリーエージェント代表の西原聡司さん、ヘッドブルワーの藤戸淳平さんの2人。
西原さんは、アフリカ11か国を旅してケニアで起業、藤戸さんは世界40か国を周遊しベトナムのビール製造会社で働いた経験を持つ。そんな二人が同じボランティアに参加し、偶然にも地元が近く、「美味しいビールを売りたい」とECサイトの立ち上げを考えていた西原さんと、「ビールをつくりたい」藤戸さんがつながった。「運命みたいですよね」「女の子なら結婚してたかな」と笑う。
今、西原さんは事業計画や販路開拓を、藤戸さんはビールづくりを担当する。
築約70年の古民家、縁側から見えるのは醸造所
そんな二人がビール醸造所を構えたのは、民家がぽつりぽつりあるのどかな呉市安浦町市原集落。築約70年の木造で田の字型の古民家を、1年間ほどかけて改装し醸造所とオフィスをつくった。
よく見ると、敷居のあとから和室の続き間があったことが分かる。玄関もそのままで、誰かが間違えて入ってきそうだ。大きなタンクが部屋にちょうどよく収まっているのは、この家のサイズに合わせてタンクを低く横太に作ってもらうといった調整をしたため。「メーカーさんにジャパニーズオールドハウスに入れますって説明したら不思議がられました。これだけ古民家っぽさが残っているブルワリーはあんまりないんじゃないかな」と藤戸さんも笑う。
かつて縁側だったところはガラスを残し、外から醸造所の様子が見える。今のところ醸造所の見学は問合せがあった場合に限られているが、いずれは見学に加え、テイスティングもできるようなプランも提供したいとのことだ。
市原でつながったIBクラフトビール
IB BREWINGの古民家ブルワリーは、昔からここにあるかのように市原の風景になじんでいる。なぜ、この場所だったのか。
きっかけは、西原さんが2018年の西日本豪雨の際に災害ボランティアとして市原にやってきたこと。ボランティア以後も交流を続ける中で、市原で被災し家族を亡くし引っ越された家主と出会った。その方が二人の夢を応援してくれる形で貸してもらえることになった。
IB BREWINGのIBは、市原(ICHIBARA)からとっている。
「市原集落は地元を大切にしている人が多い。だからここで立ち上げた僕らの事業も応援してくれるのではないか」と西原さん。そして「応援は口だけじゃなく、実際に手伝ってくれるんです。資金面もそう。いろいろな人とつながって、ここまできた。僕たちの力だけではとても無理だった」と振り返る。IB BREWINGは人との出会いによって心がつながり、生み出されたものだ。
ビールは国境を超えるコミュニケーションツール
そもそもなぜ二人は、ビールを売りたい、つくりたいのか。海外で起業した西原さんは、困っている時にビールを介して人とつながり元気づけられたという経験があり、人と人とのつながりを生むビールに魅力を強く感じていた。藤戸さんは、もともとビールは苦いもので苦手だったそう。チェコで初めて飲んだクラフトビールの美味しさに衝撃を受けてビールを飲むようになり、地元の人と交流がすすんだ。2人にとってビールはコミュニケーションツールとなり、「人と人をつなぐ美味しいビールをつくりたい」という共通の目標が生まれた。
藤戸さんにクラフトビールの魅力を聞いた。「僕の持論なんですが、クラフトビールは材料がそろっていて、手順さえ守ればできる。まずく作るのが難しいくらい」と前置きしたうえで、「70点のビールを作るのは簡単なんです。それをどうやって100点にあげていくかが大事。ビールづくりって、温度やタイミングで何がどう変化するかを考えたりと、化学的な知識が求められる場面が意外とあります。アイデアだけでは美味しいビールはできない。だからこそ、いろいろなブルワリーさんに教えてもらったり、たくさん調べて、できるだけちゃんと勉強したい」と話す。知識と経験、そしてイマジネーションを働かせることで味わいは無限に広がる。「それができるようになるために、絶賛経験修行中です」
ビールの可能性を探る、定番3種類と限定ビール
現在、つくっているのは、定番3種類と、限定ビールの4種類。
定番3種類は飲みやすさを重視。ひまわりの絵柄の「サンフラワーウィートエール」は同社の看板ビール。さわやかでありつつも、ほんのり香ばしい味わいが楽しめる。
そして一番人気の「ハニーホッピーIPA」。IPAといえば、さまざまなスタイルがあるクラフトビールの代表格。蜂蜜を使うことで、苦味と甘味のバランスがほどよくとれている。「飲みやすいし、料理にもあわせやすい。個人的にはスパイスカレーとの相性がいい」と藤戸さん。
もう一つの定番が「ホップエール」。サンフラワーウィートエールの8倍ものホップを使ってつくるもので、藤戸さんいわく「コップに注いだ瞬間に香りが爆発する」とのことだ。
さらに限定ビールで、新しいビールづくりにチャレンジする。OEMの経験も刺激になっている。クライアントから、思いがけない材料や製造方法を求められることもある。その要望を叶えつつ、いかに美味しいビールにしていくか。その思考錯誤から新しいビールのヒントを得る。「定番ビールは創業当時から味は変わらないけど、レシピを改良しながら品質の維持と向上につとめています。この3種類の安定供給で経営地盤を固めて、4番目の限定ビールでチャレンジングなビールづくりをして、ビールの可能性を探りたい」と西原さんは力を込める。
そのビールづくりを今、海外に向けても広げようとしている。「海外に醸造所をつくりたい。でも、やりたいことは1年単位で変わっているから、1年後はまた違うことを言っているかも(笑)。自分でやりたいことを見つけて、ワクワクする方向に向かっていきたい」と目を輝かせる。
そんな二人の熱を直に感じたいと、千葉県から働きにきた女の子がいる。「二人の事業を進めるスピード感や、世界をフィールドにしている規模感に驚いています。いろいろ学びたい。出会えてラッキー」と話す。
最後に、二人にお互いに声をかけてもらった。
西原さんから藤戸さんへ。「美味しいビールをつくって」
藤戸さんから西原さんへ。「売るのは任せた。美味しいうちに届けて」
二人のやりとりを聞いていると、IB BREWINGを一刻も早く飲みたくなった。コンビニエンスストアに販路を拡大中と教えてもらい、近くのコンビニへ急ぐ。なんとか2種類を手に入れることができた。
好評につき品薄状態の店舗も多いため、確実に手に入れたいなら、ECサイトをのぞいてみよう。
体験内容
地ビール工場見学(人数・日時は事前にご相談ください。)
名称 | 株式会社 Story Agent(IB BREWING) |
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お問合せ | 080-2890-3154 |
営業時間 | 事前にご確認ください |
定休日 | 不定休 |
駐車場 | 事前にご相談ください |
ウェブサイト | https://ibbrewing.jp/ |
所在地 | 広島県呉市安浦町大字中畑1238 |
※マップアプリはマークで起動
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