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体験・遊び 民泊とみつね

あえてシンプルの心地よさ。思いのまま、正直に過ごす島時間|民泊「とみつね」

民泊とみつね

広島県呉市豊町御手洗316

呉市広から下蒲刈島、上蒲刈島、豊島の3つの島と4つ橋をわたってたどり着いたのは、豊町御手洗地区。風待ち・潮町の港町として発展し、広島県に2つしかない重要伝統的建造物群保存地区の一つです。かつて船員たちが休憩をとる茶屋や船宿が並んでいたという海沿いに、民泊「とみつね」はあります。格子戸を開けると、心をときほぐす時間の始まりです。

民泊とみつね

静かに海を眺める、畳の上で両手足を伸ばしてみる

 

ガラガラ…と格子戸を開ける音が響く。誰もいないとみつねはとても静かだ。広い土間の奥に梯子段を見つけた。1階の様子も気になりつつも、まずは2階からの景色を確かめたい。奥行きの狭い踏板を一段ずつ、足の置き場を考えながら手すりを頼りに登る。

 

2階はふすまを取り払った一つの広い和空間。海に面した壁は端から端までが窓で、海の景色をワイドに切り取っている。窓の外側にベランダのような腰掛けられるスペースがあるので、柵にもたれて外を眺めてみよう。対岸はもう愛媛県だ。波のない穏やかな海とそこに浮かぶ島々を眺めていると、心のこわばりが少しずつ緩んでいく。週末の夜は、向こうに見えるしまなみ海道がライトアップされるそうだ。

そして、寝転がって両手両足を伸ばしてみる。天井の小屋組みを見ていると、「あ~気持ちがいい」と口をついて出た。「ここが一番居心地がいい場所。心が落ち着きます」と話すのは、民泊「とみつね」オーナーの江口富枝さんだ。

 

  • ここの使い方、過ごし方は自由

 

江口さんは豊町の御手洗出身で、幼少期をこの町で過ごした。大阪で就職し、結婚。江口さん夫妻は、大阪にいるときから土地を借りて畑をつくるほどの農業愛好家で、DIYも趣味として楽しんでいた。子育てを終え、お二人とも定年を迎えてこれからの暮らし方を考えていたころ、親族から豊町の重伝建の物件を譲り受けることになった。

ただ、家の中は台風で浸水し、人が住むには難しい状態だった。大がかりな工事は地元の友人の専門業者に依頼し、壁の漆喰や塗料を塗るなどは夫婦で手掛けた。

 

もともとは食堂を営んでいた建物で、その屋号が「とみつね」。建物は明治時代に登記した記録があるので、おそらく江戸時代からあったもの。約150年以上前から存在していることになる。

入口には食堂らしく広い土間がある。外のような中のような中間的な空間だ。土間に置かれているのは使い込まれた味のある木製のテーブルとイスのみ。ここでの設備や調度品は、ここで過ごす時間を大切にしてもらうため、使う人の気が散らないようにと極力シンプルにしてある。どのように使うかは自由。土間なので、サイクリストのチームで借りて自転車ごと入ってくつろぐのも気兼ねがない。釣り仲間で借りて、海釣りの拠点にしても使い勝手がよさそうだ。

 

まっすぐに視線が抜ける心地よさ

 

海を背にして土間から奥に向かって進む。靴を脱いでふすまを開けて、また開けると中庭が現れる。すべてのふすまを開け放つと、土間から中庭までまっすぐに視線が抜ける。「あ~気持ちがいい」という言葉がまた口をつく。

中庭のリフォームはなんと手づくり。日差しを遮っていた大きな木をきり、若竹を組んだ目隠しもつくった。庭を掘り起こすと江口さんのお父さんが造ろうとしていた池の石組みが現れ、その意思を継いで池を完成させた。江口さん夫妻が土を掘って土を運び、コンクリートをはり、それを何度も繰り返して完成した力作だ。今、小さな鯉がゆったりと泳いでいる。そのほかもまだまだ手を入れたいところがあるそうで、「これからの宿題もたくさんあります」と楽しそうに笑う。

 

快適性のために設備は最新、あえて家主は不在

 

古民家だから設備も古い、というのではストレスになる。古民家ながら、キッチンや浴室、トイレには現代の設備を導入。「くつろぐ」ことを優先する一貫した考え方が、とみつねでの心地よさを一層高めている。

 

ほかの民泊では当たり前にあるものなのに、ここにはないものがある。それは「家主」だ。
民泊というと、家主と一緒に食事をつくったり、間借りをして宿泊するというイメージがある。暮らすように過ごすのも民泊のだいご味かもしれないが、ここは訪れた人にゆっくりしてもらうことが最大の目的。「コミュニケーションをとることが得意な方もいるけど、そうでない方もいらっしゃるでしょう。心の芯からくつろいでほしいから、家主は不在、1組限定の貸し切りとしました」。江口さん夫妻は裏手に住んでいるので、いざというときは頼りにできて心強い。

とみつねに滞在している間の食事は、キッチンで食事を作ってもいいし持ち込んでもいい。江口さんに紹介してもらって御手洗の食事処でお弁当を準備してもらうなど方法はいろいろある。また、「ここでカフェができたらいいかな」と計画中だ。近々、江口さんが畑で採取している日本みつばちのはちみつが味わえるかもしれない。

まるで島が光っているかのような夕暮れ

 

お話を聞きながら、気がつくと海を見てしまう。言葉が途切れても、その間を穏やかな海が埋めてくれる。「確かにきれいな景色なんだけど、ここに住んでいる私たちは当たり前すぎて」と笑う。でも見慣れた景色でも同じ景色は一日となく、時おり特別な景色を見せてくれる。「前の島から朝日が昇り、夕日が島を照らします。そうすると、まるで島が光っているように見えるんですよ」と目を細める。「ほら!」と指差す先を見ると、光を浴びて輝く島が見えた。

名称 民泊とみつね
お問合せ 090-4278-0621
営業時間 予約時にご相談ください。
定休日 不定休(事前にお問い合わせください)
駐車場 1台
ウェブサイト http://sangokushiy.html.xdomain.jp/tomitsune
所在地 広島県呉市豊町御手洗316
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