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体験・遊び 音戸海産 有限会社

「かきむすめ」で海を守り、世界で勝負する「広島かき」に。| 音戸海産有限会社

音戸海産 有限会社

広島県呉市音戸町波多見7-5-2

「うちのかきは、生食で食べるのはもちろん、天ぷらがおすすめ。味ののびがいいので、シンプルに塩やしょうゆで味わっていただきたいですね」と教えてくれたのは、かき養殖業を営む音戸海産の栗原さん。さて、味がのびるかきとは? 同社が生み出した全国初のブランドかき「かきむすめ」に託した願い、そして広島かきの未来について、かき打ちをしながら詳しく聞きました。体験で打ったかきはお土産として持ち帰ることができます。

音戸海産 有限会社

自分で打ったかきをお土産に

かきの平らな面を上にして、かき打ちという道具を貝の合わせの部分に打ち込む。「貝柱は親指側にありますよ」「道具を水平にぐりぐりと動かして貝柱を切り離してください」。音戸海産の取締役である栗原 単(すぐる)さんの具体的なアドバイスにそって、自信をもって道具を動かす。

 

パカッと蓋が開くと白い身が現れた。音戸海産のかき「かきむすめ」だ。かき打ち体験は約30分、打ったかきを持ち帰ることができるのがうれしい。

 

その場で購入もできる。秋にはその年に初めての出荷される「紅葉牡蠣」、1月になるとさらにうまみを増した「雪見牡蠣」、3月以降は厳しい冬を乗り越えて春を迎えた「桜牡蠣」を売り出す。

 

味がのびる「かきむすめ」

さて、かきむすめはどんな味なのか。単さんによると「上品で、味ののびが長いのが特徴。調味料のあとでもかきの味が長く残ります」とのこと。例えばポン酢で和えたかきは、ポン酢のさわやかな香りとかきの濃厚なうま味が一体となってとてもおいしい。かきむすめでそれを試すと、まずぽん酢の味がきてそのあとにかきの味。2月以降になると味がさらに濃くなり、味が残る時間がさらに長くなる。味は濃くなるのに、癖は出ない。

かきむすめの味をより強く感じてもらうため、単さんは地元の呉市ではなく広島市内の飲食店に売り込んだ。山のミネラルが強いかきに慣れた広島市内の料理人なら、海のミネラルが強いかきとの味の違いをより感じるはずと判断したからだ。飛び込み営業した飲食店は100軒を超える。料理人から「かきらしい、かき」「味がしっかり残るので調理の幅が広がる」と評され、現在は60~70店舗の飲食店に配送している。よりおいしい状態で届けるために当日配送だ。

 

全国で初めてブランド化に挑戦

広島かきの養殖は、戦後まもなく広島湾内で始まった。その動きは南下し1951(昭和26)年、音戸海産は栗原かき制作所として当時の安芸郡音戸町北隠渡で漁業との兼業でかき養殖を始めた。1960(昭和35)年にかき専門業者に。地元漁師に声をかけてかき養殖への理解を深め、仲間を増やした。音戸かきの創世記をつくった会社といえる。漁具開発にも力を入れ、広島のかき打ち場でよく見られる、水揚げしたかきをステンレス製のバケットに入れてかき打ち場へ流す、というシステムをつくったのも同社だ。

農業でブランディングが流行っているのを知った同社の2代目社長は、「これからの時代は生産者が中心になる」と1988(昭和63)年にかきに「かきむすめ」という名前を付けてブランド化。全国初の取り組みというところに、同社の開拓精神が見える。チャレンジを続けながら育てたかきを、自信をもって出荷してきた。

 

ちなみに、かきむすめという名前には「海を守り育てる」という同社の理念が込められている。むすめのように「かきを育て、地元の海を育てる」という決意だ。今でも音戸の海の清掃活動に積極的に参加している。

 

おいしさを証明するために

「社内の人間は、うちのかきが一番うまいと言う。確かにうまいし、一生懸命、丁寧に育てている。でも、ほんまかいな、とも思ったんです」と単さん。

 

単さんはかきむすめのおいしさを実証するため、漁場のデータを集めた。音戸の海には四国から、広島県南部、北部方面の3方向から海流があり、さらに近くの大陸棚によって縦の海流が加わり酸素が豊富に含まれる。この4つの海流によって良質なプランクトンが発生するそうだ。地元の高校と音戸の海のプランクトンの種類を調べたところ、川がない音戸の海は、山のミネラルが流れ込む海域と違って、海藻のミネラルが多いことも分かった。これが、かきむすめの味が長く続く秘密だ。

現在も、大学や研究所との共同研究を進めている。AIを使った海の環境把握、海での作業効率を上げる研究、かきの自然道具の効果を再研究など。先人たちが築いてきた経験則を科学的に分析し、おいしさの説明につなげている。

「ほかの食べ物と同じで、かきも食べるもので味が変わる。4つの海流、海のミネラルが多い海域でつくられているのというのが、かきむすめの最大の特徴です」

 

世界で勝負できる「かき」を目指して

単さんがロジックにこだわる理由を聞くと「世界で勝負するため」ときっぱり。冷凍技術が向上し、世界中からかきが日本に入ってくるようになった。世界の品評会やプロに選ばれるには、おいしさの根拠、ロジックが必要になるとのことだ。

そして、音戸かきを含めた「広島かき」の日本一を守りたいという思いも漏らす。「広島かきといっても、漁場によって味も旬も違う。音戸のように川のない漁場と山のミネラルが流れ込む漁場では、潮のタイミングも旬も違う。それぞれの漁場で工夫して生産しています。多様性のある広島かきとして、世界で勝負していきたい」と力を込める。ワインのように、土地ごとに特色を打ち出していけたら面白い、おいしさをグラフで表現できてもいいかもとアイデアがあふれる。

 

負けんぞという気持ちが広島かきの発展に

単さんが稼業の手伝いとして海の仕事を始めたのは13歳のとき。事業を成功させる方法を学ぶため大学に進学、在学中に会社を興すなどして経営のノウハウを身に着けた。その会社は信頼できる人に譲り、23歳で音戸町に。現在42歳、早朝5時に漁場に行き、水揚げの作業が流れ始めたのを確認して、12~14時に研究者らと打ち合わせ。14時から17時まで配達し、そのあとは広島各地の取り組みや会議などに参加する。かきむすめ、それを含めた音戸かき、さらに広島かきを、世界で勝負できるものにしようと奔走する。

 

音戸かき、広島のかき業者は、おいしいかきを育てるために海を守る仲間であり、ライバルでもある。「お互いに、負けんぞという気持ちを持っていれば、もっと面白いことが起こるはず。生産者ごとでブランディングできるようになり、その違いを広島県民が語ることができれば広島かきの文化発展になる。それは、日本一の広島かきを守ることにもつながる。そんな未来はそう遠くない」と単さん。「5年以内には、広島かきは今とは違う動きをしているはず。どんどん面白くなる」とのことだ。

広島かき、音戸かき、そして音戸海産のかきむすめの“これから”をお楽しみに。

 

 

体験コース

1人2500円

1グループ5人まで、10歳以上

所要時間 30分程度

体験期間 毎年2月~4月15日まで、12時以降
※新型コロナウイルス感染症の状況により延期する場合があります。
体験希望日の1週間前ごろまでに電話で予約を

名称 音戸海産 有限会社
お問合せ 0823-52-2452
営業時間 9:00~16:00
定休日 日曜・祝日
駐車場
ウェブサイト http://www.ondo-kaki.com
所在地 広島県呉市音戸町波多見7-5-2
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