潮風を受けながら塩づくり。じっと待つ贅沢な時間で自分と出会い直す。|株式会社 海駅
株式会社 海駅
広島県呉市下蒲刈町下島2119-21
私たちの暮らしに欠かせない「塩」。国内外で多くの塩が生産され、産地や製造方法、作り手の思いが違えば、出来上がる味、成分、香り、大きさもさまざまです。広い空と青い海に包まれる下蒲刈町で出会えるのは、薄いピンク色の「姫ひじきの塩」。どんな材料でどんなふうに作られているのでしょうか。塩のストーリーを知って味わえば、おいしさは“ひとしお”。自分が作った塩なら、愛しさも “ひとしお”です。
私たちの暮らしに欠かせない「塩」。国内外で多くの塩が生産され、産地や製造方法、作り手の思いが違えば、出来上がる味、成分、香り、大きさもさまざまです。広い空と青い海に包まれる下蒲刈町で出会えるのは、薄いピンク色の「姫ひじきの塩」。どんな材料でどんなふうに作られているのでしょうか。塩のストーリーを知って味わえば、おいしさは“ひとしお”。自分が作った塩なら、愛しさも “ひとしお”です。
古くから受け継がれてきた、豊かな自然をいかした塩作り
瀬戸内海の海上交通の要所として栄えた文化と歴史を持つ下蒲刈町。白砂青松の美しい砂浜には、毎年多くの海水浴客が訪れる。キャンプ場や古民家風のコテージもあり、最近はコワーキングスペースも誕生し、季節を問わず島時間を満喫できる。
平成12(2000)年、本土と下蒲刈島を結ぶ安芸灘大橋が完成し、島への利便性が格段に高まった。島をあげて観光客向けのお土産の開発がすすめられる中で、スポットがあたったのが塩作り。豊かな自然に恵まれる下蒲刈町では古くから、天然海水を丁寧に煮詰めて塩を取り出すという伝統的な手法が受け継がれてきた。
天然ミネラル豊富、姫ひじきの甘みでまろやかに
下蒲刈の冬の海では良質なひじきが採れる。若いひじきの新芽は「姫ひじき」と呼ばれ、乾燥後に戻しても柔らかくふっくらとした食感となる。「塩作りと姫ひじきを一緒にしたら?」という発想から、「姫ひじきの塩」が生まれた。当初は行政と民間のコラボレーションで生産され、平成20(2008)年から株式会社海駅が事業を引き継いでいる。姫ひじきの塩が作られる工場は、「梶ケ浜海水浴場」のすぐそばにある。
工場から海にホースを垂らし、天然海水をくみ上げる。そして冬の間に目の前の海で収穫した姫ひじきと一緒に、鉄のかまで煮込む。かき混ぜて、かき混ぜて、薪をくべ続けて一昼夜。海水が蒸発したら、遠心分離機で塩とにがりに分ける。できた塩を鍋でいり続けて乾燥させたら出来上がりだ。うっすらとピンク色をした塩は天然カルシウムなどのミネラルを豊富に含み、姫ひじきの甘みでありまろやかな味わい。舌にのせると、塩味がじんわりと優しく広がっていく。「ふんわりと磯の香りがしませんか? 海藻を使っているからかお吸い物と相性がいいんです」と教えてくれたのは、株式会社海駅の代表取締役、脇由貴美さんだ。おにぎりを作って、おいしさをダイレクトに味わいたい!天ぷらやバーベキューのつけ塩、鍋の味を決めるのにも重宝しそう!と想像が膨らむ。
心静かに、ゆっくり混ぜることがおいしさのコツ
この塩を自分で作ることができる。事前に電話で体験予約をしておけば、一昼夜をかけず1時間で完成する。
体験当日は、コテージなどの総合受付となっている「貝と海藻の家」で受け付けを済ませて、工場の横にある「姫ひじきの家」へ。海水と姫ひじきを煮詰めたものが土鍋に用意されているので、軍手を着けてその前に座る。鍋を火にかけてしばらくすると、ぷつぷつと泡が出る。あっという間に泡の立ち方が激しくなり、かき混ぜて全体を落ち着かせる。器からこぼれないようにゆっくりとかき混ぜる。
液体の表面を見つめて、かき混ぜることに集中する。しばらくすると重みを感じるようになった。「カルシウムと分離しやすいので、ゆっくりとかき混ぜることがおいしい塩を作るコツ」と聞くとますます目が離せない。
すると頭の中に、最近気になっていたことが浮かんできた。頬にあたる風や海のにおいをはっきりと感じるようになり、「気持ちいいなぁ」という感覚で頭がいっぱいになり考えるのをやめてしまった。
そういえば最近、すきま時間はついついスマートフォンの画面をタップしてしまう。こんなふうに何もしない時間は久しぶり。自分の中を見つめる時間が心を静かにしてくれた。自問自答をたっぷり楽しんだら、そろそろ会話も楽しみたい。塩作りを教えてくれている脇さんに、塩作りの面白さを聞いてみた。
ある日、子供たちがずらりと並んで、一斉に塩づくりが始まった。かき混ぜ方や火力の違いがあり、早くできる子もいれば、時間がかかる子もいる。時間がかかって不安そうな子に「丁寧にかき混ぜているからだね」と脇さんが声をかけると、ほっとした表情を見せるそうだ。シンプルな材料と手法だからこそ、作り手の思いがより顕著に表れるのかも。
商品と同じパッケージに入れると立派な姿に
自分の器に目を戻すと、器から泡が飛び出すほどの大騒ぎ。水分もずいぶんと飛んできた。あわてて火からおろし、再びかき混ぜる。塩の結晶が見えてきた。さらにかき混ぜてザラザラがサラサラとしてきたら完成だ。
熱がとれたら袋に詰める。商品と同じパッケージに入れられたものを見ると、なんだか誇らしい気持ちになる。
塩作り体験は年中いつでもできる。年間100人ほどが体験するそうだ。海水浴場のそばという立地から夏の利用が多い。5名から15名まで可能で、料金は5名まで4200円。1人追加ごとに600円追加となる。作った塩はお土産だ。
自宅に戻り、自分が作った塩と商品を食べ比べてみた。見た目から違う。色は薄く、塩のつぶが大きすぎたり小さかったりまだらだ。手のひらに出してなめてみると、塩味が強かったり全く感じなかったりと味わいもまだら。商品を出してみるとサラサラ。おにぎりを作ろうと濡らした手につけると、手のひらに滑らかに溶けていく。まろやかさはこうしたところから生まれているのだと実感。次こそは美味しい塩をつくる!と決意を固める。
冬の下蒲刈での塩作りもおすすめ
そういえば脇さんが「夏もいいのですが、冬もお勧め。火が暖かいし、冬の海の景色もいいですよ」と教えてくれた。脇さんは結婚を機に下蒲刈町に来た。当たり前にあったものがない島暮らしに戸惑ったそうだが、あれから35年。「ここからの景色がとても好きなんです」と工場前に広がる海を見せてくれた。開けた景色と体を持ち上げるかのように全身を包む潮風。脇さんの素敵な笑顔を見て、違う季節にも来てみたいと思った。
姫ひじきの塩作りは、下蒲刈町の自然の恵み体験だ。そして一つの作業に集中する気持ちの良さはストレス解消にも。自分に出会い直す時間が得られる。
体験内容
1グループ5~15名まで
5名まで4200円(5名を超える場合、1名ごとに600円)
所要時間 1時間程度
予約受付 呉市農林水産課 0823-25-3317(※事前予約をお願いします。)
名称 | 株式会社 海駅 |
---|---|
お問合せ | 0823-65-2111 |
営業時間 | 9:00~16:00 |
定休日 | ※予約受付は平日のみ |
駐車場 | 有(約100台) |
ウェブサイト | https://kaieki.jimdofree.com/ |
所在地 | 広島県呉市下蒲刈町下島2119-21 |
※マップアプリはマークで起動
- グルメ
- 宿泊
- 観光案内
- 体験・遊び