自分たちでできることはすべて行う

マリン倶楽部カープボートでは、SUP（※）、シーカヤック、手漕ぎボートの体験とレンタルボートなどマリンレジャーサービスを提供している。

景勝地「桂浜」を過ぎて、県道を少し行ったところに、マリンレジャー体験ができる施設「カープビーチ」がある。休日となると家族連れやカップルで賑わい、都会では味わることのできないゆったりとした時間の中で非日常の体験ができる場所だ。
瀬戸内ならではの「多島美」を望むことができるこの施設は、お洒落なのになぜか親しみやすさを感じさせる。
「やっぱりうちの魅力はこの手造り感ですかね」とさり気なく話すのは
マリン倶楽部カープボート・マネージャーの有居篤史さんだ。

施設内には元々製材所であった建物を、多目的スペースとして自らの手で６ヶ月かけてリノベーションをした。
お洒落なデッキなどもすべて手造り。できることはすべて自分たちの力で行った。
居心地の良さの秘密はこの手造り感にあるのかもしれない。

（※）SUPとは「Stand Up Paddleboard（スタンドアップパドルボード）」の略称。ボードの上に立ち、パドルを漕いで水面を進むマリンスポーツ。

 

大切にしていることは「まずやってみる」こと

様々なマリンレジャーができる場所は、県内においてあまり類を見ない。それほど多くのマリンレジャーを展開する為に有居さんが大切にしていることは
「とにかくやってみることなんです。やってみないと何もわからない。やってみて上手くいかなかった時はその原因を探って、再挑戦しています」と熱く語る有居さん。

 

この倉橋を盛り上げたい

有居さんには、子どもの頃から父の実家がある倉橋町に定期的に訪れて、祖父と海水浴や釣りに行くなど楽しく遊んだ思い出がある。
そんな楽しい思い出の詰まった倉橋町でも、自分が大人になるにつれて過疎化していく。

「なんとか自分が倉橋町を盛り上げることはできないか。倉橋町の特徴を活かした事業で地域を活性化できないか。」

悩み行きついた結果が、このマリンレジャー事業であった。

2017年に創業し、ボートの貸出事業から始め、現在では総合マリンレジャーを提供するまでに至った。しかし、その道のりは決して平坦なものではなかった。

創業の翌年、西日本豪雨災害で被災。倉橋町においても至るところで土砂崩れによる道路網の寸断、停電、約1ヶ月の断水等甚大な被害を受けた。
「カープビーチ」においても、多目的ホールやSUP・シーカヤック等を格納している倉庫に大量の土砂が流入し、壊滅的な被害を受けた。

「始めたばかりなのに・・・」

一つずつ築きあげてきたものが、一瞬で失われる。有居さんの心は今にも折れそうになった。だが、地域住民や県外ボランティアの方々による懸命な土砂撤去作業の姿や励ましの声で少しずつ希望を取り戻すことができた。
そうした周りからの支援もあり、今、安心してマリンレジャーが楽しめる環境にある。復旧するまでに約1年費やしたが、そんな苦労を乗り越えてここまでやってこられたのは、復旧活動に携わっていただいた方々への感謝の気持ちと創業当初からの「この倉橋町を盛り上げ、地域に貢献したい」という一貫したぶれない姿勢にある。

 

最近、お客様が増えてきた

お客様の中には穴場スポットとして気に入ってくださり、「本当は誰にも教えたくない、隠れスポットですね」とお話される方も・・・。
「非日常を感じられる環境だからこそ、そのようにおっしゃっていただけるのだと思います。でも、弊社としては、ぜひお知り合いに話をしていただいて、口コミでうちのことが広がって欲しいですね」と有居さんは笑顔で話す。

 

３つのビーチでマリンレジャーを楽しむ

マリン倶楽部カープボートでは、3つのビーチを拠点にさまざまなマリンレジャーを楽しむことができる。コロナ対策にも取り組んでいる。

『カープビーチ』

カープビーチでは、海水浴はもちろんのこと、バーベキュースペースやキャンプ場所もあり、幅広い方が楽しむことができる。さらには、SUPやシーカヤック、手漕ぎボートも完備。
遠浅の海で潮が引けば、砂浜が遠く沖合まで広がることから、バギーに乗ることも、ワンちゃんと一緒に散歩すること可能だ。海を横目に風を切る爽快感をぜひ味わってほしい。

 

『笹子島ビーチ』

笹子島ビーチでは、レンタルボートやショートクルージングが利用できる。
免許が必要なレンタルボートの種類は4種類。また、免許がいらない2馬力レンタルボートもあり、航行範囲は限られるものの、気軽に沖釣りが楽しめるとリピーターのお客様も増えている。

桂浜・笹子島のショートクルージングを行っており、岸からは見ることができない景色を望むことが可能。
また、日本遺産の構成文化財として追加認定された「亀ケ首（かめがくび）発射場跡」へのチャーター船の運航も開始した。呉海軍工廠の施設の一つで、戦艦大和に搭載された46ｃｍ主砲の試射などが行われた発射試験場があった場所だ。

 

『桂浜』

桂浜では、今冬、1棟貸し宿泊施設「ＳＥＥ　ＳＥＡ　ＳＯＮ（シーシーズン）」がオープンする。出会いと海、子供心などの意味を込めてと名付けた。
築30年の民家を改装し、コロナ禍でも安心して利用することができるよう1グループ貸し切りとした。玄関の場所を変え、海が見渡せるよう扉を大きくしたほか、キッチンや風呂も備えた造りである。
近隣に宿泊施設が少なく、マリンレジャーのお客様から倉橋町で泊まりたいという要望に応えるために、準備したもの。
有居さんは「長く過ごしてもらうことで倉橋の魅力が伝わるはず」と話す。

 

働いてくれる仲間を募集中！！

マリン倶楽部カープボートでは、一緒に働いてくれる仲間を募集している。
「海の側で開放的に気分よく仕事ができます。明るく元気な方と一緒にこの島を盛り上げたいですね」と有居さん。
これからは、新しい仲間の協力も得ながら、一緒に倉橋町を盛り上げていく。